優秀賞受賞作品②
昇華しきれない過去でも
                         生きるちゃん。
 私は、中学一年生の時に混合型乖離障害を診断された。あまり浸透されていない病気だが、ストレスから発症するものだ。私の場合は、小学五・六年生の時のイジメが原因だ。主犯格である三・四人から悪口や陰口、ありもしない噂を学年中に流された。この時までは耐えることができたが、小学六年の冬休み明けからだんだん虐められる内容もエスカレートしていき、肉体的な攻撃も加わってきた。例えば、蹴られる、足を引っ掛けてくる、殴られるなど。スカートで隠れる太ももに青痣をつけられることもあった。この時には、もう心は殺されていたと思う。

今でも夢に見るトラウマな出来事がある。それは、小学六年生の二月に背の高い遊具から突き落とされたことだ。幸いにも落ちた時に右肘が地面についたため、かすり傷程度で済んだが一瞬何が起きているか分からなかった。落ちる瞬間に走馬灯が見えた気がして、やっと地獄から解放されると思った。けれど、夕方に見回りに来るパトロールカーのサイレンで目が覚めた。気がついたら、辺りに誰も居なくて、一人だけだった。翌日も、変わらず学校に行って、何とか小学校卒業まで殆ど欠席せずに耐えた。

 運が悪いことにいじめてきた主犯格三・四人と同じ地元の中学校に進学した為、毎日いじめられるかもしれないという恐怖に襲われていた。中学一年の夏、遂に精神の限界が来て、仲が良かったクラスメイト・友達の名前や顔を忘れてしまい、小学校の楽しかった思い出が思い出せなくなった。これが乖離性障害の症状だった。乖離性障害と併発して心因性難聴にもなってしまった。在籍していた中学校には行けなくなり、五年間習っていたピアノも辞めざるを得なくなった。また、登校する際に校門が見えてくると、パニックになって目の前が真っ暗になるという症状も併発した。今まで当たり前にできていたことができなくなり、あらゆる機能を失った。13歳ながらにこの先の未来に不安を抱き、人生に失望した。失望したと同時に虐めていた人間を全員恨んだ。何も悪いことをしていないのにどうして私が辛い思いをしなければならないんだと。

先が見えないまま通信制高校に進学した。そこでは、自分と同じように虐められた経験がある子、難病を患っている子と苦しい思いをしてきた子がたくさんいた。この子達なら私の辛い思いをした過去も共感してくれるだろうと思い、打ち明けてみた。今までに経験したことのない温かさに涙が溢れそうになった。

私が受けてきたいじめはこの先も決して昇華しきれることはないけれど、今はそんな過去を忘れるくらいに生きていてよかったと感じることが多い。あの時、死んでいたらこんな楽しい思い出をつくれていなかっただろう。過去なんてどうでもいいやと思えるくらいに「今」がすごく楽しいから。        
私は、明日も頑張って生きるよ。
  


前ページへ戻る